再び、際崩れの時代
『際崩れ』(キワクズレと読みます)
自動車は、シャシー(土台)に重厚な車体を乗せ、前輪で舵を取りその両輪がバランス良く同時に左右同じ動きをするように工夫した乗り物です。
これに自走するためのエンジンと制御するためのブレーキがつけば屋根があって雨風を防ぎ、ほぼどこへでも行かれる快適性は確保されます。
この条件が揃えば、その商品価値は消費者の選択に委ねられるだけですが、約100年間、誕生以来これまで石油燃料エンジンだけが主流でした。
この大がかりな装置の主体がエンジン部分の開発競争の歴史であったところから、新規参入が難しく世界中の既存企業の競争淘汰の展開になっていましたが、今回の異常な景気が後押しする環境問題への関心から、エンジンがハイブリット(石油燃料と電機の混合)技術を飛び越えて一気に電機エンジンが主流になるような勢いの中では、従来の自動車メーカーの他に、電機産業、あるいは蓄電池技術の産業界から自動車産業への新規参入が可能です。
実際にそうした蠢動も見られつつあります。そうなると、数千点から1万点にも及ぶといわれる自動車部品の関連業界にも新規参入組が生まれるでしょう。
こうした現象を『際崩れ』といい、既存組は戦々恐々とし、新規組は絶好の機会到来と喜びます。
10年から20年サイクルで表れる現象で、大きな産業構造の変化には『際崩れ』が当たり前になります。
例えば、よその畑を真似て思わぬところから同じネギやジャガイモが生み出される。
農家でなかったところからコメや野菜がふんだんに生み出されてくれば、市場は一気に変わります。ある種の専門性の垣根が取り払われる現象です。
どんな業界でもこうした変化と無縁ではいられません。
こうした機会を見過ごさないように、自社の取扱商品がそのライフサイクルのどのあたりに位置しているものか機に敏でなければなりません。
以前に“法人企業による農業経営”という話題を取り上げましたがこれも『際崩れ』の一つです。
変化の時代には、自社にとって怖いこともありますが、一方では好機到来と喜ぶべきです。